無人航空機(Drones)は、もうすぐそこに(イベント・レポート)

去る3月19日、スタンフォード大学で『無人航空機:商業時代の幕開け(Drones – The commercial era takes off)』というイベントが開かれた。

主催したのは、VLAB。起業を促進するためのNPOであるMIT(マサチューセッツ工科大学)エンタープライズ・フォーラムのシリコンバレー支部だ。最新のテクノロジーの動向から起業家の心得まで、広くアントレプレナーシップに役立つイベントを開催している組織である。

無人航空機は、英語ではDroneともUAS(Unmanned Aircraft Systems)、UAV(Unmanned Aerial Vehicles)とも呼ばれ、現在その規制やプライバシー問題が取りざたされている最中。それでも、パネルディスカッションには、一般消費者向け、軍事用、産業向けにそれぞれ無人航空機を開発している企業と、この分野に投資するベンチャーキャピタル会社から5人が参加し、ひとことで無人航空機と言っても、すでに多様化が進んでいることを思わせる顔ぶれとなっていた。

参加者は以下の通り。

・司会 クリス・アンダーソン(元『Wired』誌編集長、3Dロボティックス社CEO)

・ヘレン・グレーナー(サイファイワークス社CEO、iRobot社共同創設者)

・ジャック・シルドーン(ラックス・キャピタル社

・マシュー・ポブロスケ(BAEシステムズ社無人航空機プログラム・ディレクター)

・ジョナサン・ドーニー(エアウェア社CEO)

左からアンダーソン、グレーナー、シルドーン、ドーニー.ポブロスケの各氏

無人航空機、ことに「模型航空機(Model Aircraft)」と分類される小型無人航空機は今、ほぼ毎日のようにアメリカのメディアで大きく取り上げられている話題だ。ホビイストが飛ばしたものと思われる無人航空機が民間旅客機とニアミスを起こした事件が相次いだほか、警察が利用することによって、完全な監視社会へいよいよ近づくという危惧、犯罪者が利用すれば武器を積んだテロ行為に利用されたり、空き家を狙った強盗が起こったりするといった危険性も取りざたされている。

もちろん、近隣の住民が飛ばした無人航空機が自宅の上空を旋回すれば、窓から覗き込まれるのと同じくらいの不愉快を感じるだろう。アフガニスタンやパキンスタンでテロ容疑者の所在の特定と殺害に、どう無人航空機が使われたというニュースが報じられるにつけ、同じテクノロジーがいずれ一般のわれわれの頭上にも災難をもたらさないとも限らない。

開発も進んで無人航空機がますます小型化している一方で、無人航空機をハックし、第三者が飛行を操作することが可能なことも証明されている。根本的な安全性も含めて、議論は白熱するばかりだ。

 連邦航空局(FAA)の規制によると、許可なしの小型無人航空機の飛行は現在、地上400フィート(約120メートル)以下に制限され、また都市部などの混雑したエリアや空港付近、大型航空機の飛行ルートから十分離れていることが求められている。また商業飛行は禁止されている。

ただ、オバマ大統領が昨年署名した「FAAの近代化と改革法」により、2015年9月までに通常の有人機と無人航空機とで空を共有するための規制緩和が進められており、最近も一般からのオンラインによるヒアリングを行ったところだ。

しかし、FAAのプロセスは緩慢で混乱しているというのが、無人航空機関連者の見方である。また、全米の各州ではプライバシー問題への懸念から、現時点では警察が捜査令状なしに無人航空機を利用することを禁止する動きが出ている。無人航空機に関わる起業家らにとっては、雲は晴れない。

そうした背景もあって、今回のパネルディスカッションは、もっぱらこうした厳しい条件下でどうビジネスを立ち上げていくかといったところに話題が集中した。

最近はロボットのイベントに必ずと言っていいほど登場し、ロボットや無人航空機を一般消費者市場へ浸透させるアドボケート(擁護者)にもなっているアンダーソン氏は、それでも積極的なユーザーが時に法的には「グレーな領域」であっても使い続けていくことで規制は緩和の方向へ進むと言う。同氏の3D Robotics 社のアプリケーションでは、「ジオフェンシング」というしくみを用いて、無人航空機が飛行するエリアをあらかじめ特定することができるような安全策を提供している。

シルドーン氏も、無人航空機は他のテクノロジーと同じく、テクノロジーの進化に法律が付いていっていない状態で「承認を得るよりも、容赦を乞いながら」伸びていくしかないと語った。ベンチャーキャピタリストである同氏は、しかしこの分野の投資にあたって、規制の存在に邪魔されることはないという。

規制の厳しいアメリカを避けて、海外での売上を伸ばしているのはAirware社である。CEOのドーニー氏によると、同社製品はフランス、インド、ケニア、カメルーンなどの諸国へ輸出されて商用飛行に用いられている。同社は連邦政府からの研究補助金を受けていないため、輸出にあたっても国務省ではなく、商務省の認可を得る。

同社は、無人航空機のハードウェアに統合するOS開発を行い、利用者側が自在にカスタマイズできるようなプラットフォームを提供する。言わば、無人航空機のアンドロイドOS開発のようなビジネスモデルだ。輸出先では、非軍事業界に限り、農場やインフラ設備のモニタリングなどに利用されているという。

グレーナー氏がサイファイワークス社で開発する無人航空機は、マイクロフィラメントで常時地上と接続状態にあるというタイプだ。このマイクロフィラメントによって、長時間に渡って電源の供給を受け、通信も遮られないという、これまでの無人航空機の弱点を解決した。さらに高解像度の画像送信も行う。

2タイプの無人航空機があり、EASEは狭い屋内にも侵入し、もうひとつのPARCは空中の1点で停止して、ヘリコプターのように浮遊し続けることができる。両機共に、言わば「凧」のように地上とつながっているわけだが、それでも空を飛行するため無人航空機としての規制を受けるようだ。主に軍事利用目的に開発されているが、災害時の救助支援や商業利用も目論んでいる。

サイファイ社の無人航空機EASE

サイファイ社の無人航空機EASE

パネリストの中で唯一、既存の航空産業から参加したBEAシステムズのポブロスケ氏は、20年以上前から行われてきた軍事用の無人航空機開発は、必要に迫られて行われてきたもので、必ずしもコストや価格に敏感な産業ではなかったという。今後は、部分的には一般の商用既製品を利用しながらも、アーリーアダプターである軍事用に先端の技術開発を行うというパラダイムは、今後も存続し続けると強調した。

これは、無人航空機の流行で、ホビイスト用、商用、軍事用の無人航空機が混乱されていることを指摘したもの。また、既存航空業界が規制緩和を妨害しているという起業家コミュニティーの意見にも反論を試みたものだ。

それでは、無人航空機の認知を向上させるためには、どうすればいいのか。

ドーニー氏は、一般の人々がネガティブな面を想像するのは仕方がないが、よりポジティブな利点への理解を深めるべきだと語った。たとえば、強盗が隠れている場所を捜査するなどの警察による利用、消防士による利用もあれば、また保険業界も検査が困難な場所の確認などに無人航空機を送ることができる。

また、他の航空機や木、鳥などの障害物を避けるテクノロジーも必要で、高度なレーダーや3Dセンサー技術開発、また鳥が無人航空機を避けるような技術もあり得るのではないかという意見もあった。複数の無人航空機間のメッシュネットワーク技術の構築も必要だ。

会場に集まったおよそ250人の聴衆は、投資家や起業家、技術研究開発関係者が多かったようだ。最後は「無人航空機は、空を安全にする」という結びで、会場は大いに沸いた。

イベントのビデオはここに。