「みんなの手に入るロボットを作りたかった」ロモーティブ社CEO ケラー・リノード氏インタビュー

ロモーティブ(Romotive)社の「ロモ(Romo)」は、スマートフォンが小型戦車のかたちをしたドッキング・ステーションに載っているといった構成のロボットだ。このロモは、プロトタイプ時にクラウドファンディングのキックスターターで大人気を得て製品化へ進み、その後同社はスタンフォード大学のベンチャーファンドやセコイヤキャピタルなどから総額650万ドルの投資を受けた。

ロモは、コンピュータやモバイル・デバイスからの操作が可能で、回転や走行しながら写真やビデオを撮影できるほか、顔認識機能でユーザーを見分けて表情を作ったり、音楽のリズムに併せて動いたりする。また、電池が切れると自律的に充電ステーションへ向かう。

スカイプなどのテレコン機能を利用すればテレプレゼンス・ロボットとなるし、カメラを遠隔地から起動させることでセキュリティー・ロボットとしても役に立つ。オープンプラットフォームで、デベロッパーたちのアプリ開発も進む。150ドルの多機能おもちゃロボットとして、大きな注目を集めている製品だ。

同社CEOのケラー・リノード氏に、ロボニュースがインタビューした。

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ケラー・リノード(Keller Renaudo) ハーバード大学では、経済学と社会学を専攻しながら、ヤーコブ・ベネンソン教授の元でRNAやDNAを利用したバイオ・コンピュータの研究に携わった。2009年の卒業後は、スタートアップのジョブスパイス(JobSpice)社を経て、2011年にロモーティブ(Romotive)社を共同創設。26歳。

Q.  そもそもロボット分野とは、どんなつながりがあったのですか?

A. 実は、ロボットの専門知識はありませんでした。ただ、ロモーティブ社の共同創設者であるピーター(・シード)は機械エンジニア、またフー(・ニューエン)はソフトウェア・エンジニアかつデザイナーです。僕自身は、システム・デザインの知識が少々あり、またスタートアップの経験もあった。みんなで技能を持ち寄ったというところです。

Q. ロモのアイデアはどこから来たのですか。

A. 最初からロボットを作ろうとしていたわけではありません。スマートフォンを頭脳部分にして何かできないかと話し合っていたんです。そして3人でロモのプロトタイプを作ったら、けっこういけるんじゃないかということになった。2011年のことです。ただ、プロトタイプを回りの人たちに見せたら、スマートフォンは高いものなのに、こんなものに載せたら壊れたりして、無謀だと言われました。

Q. その後、キックスターターで資金を募るわけですね。

A. そうです。どうにか動くプロトタイプをキックスターターで見せたら、11万5000ドル分の予約注文が来た。ああ、需要はちゃんとあると手応えを感じました。この人気によって、エンジェル投資家から創設資金を集めることができたわけです。今ではフルタイム社員が18人いて、人材はまだまだ必要です。

Q. ロボット会社として起業資金を集めるのは大変でしたか。

A. キックスターターにプロトタイプを出す前は、「ああ、ロボット会社ね。資金は出せないね」と何度も言われました。それもそのはず。たいていのロボット会社は、どこかの教授や研究者が創設して、非常に複雑なロボットを作ります。ただ、いつまでたっても市場に製品が出てこない。しかし、われわれはそれとは逆のアプローチで、可愛い生き物のようなロボットを作り、すぐに欲しいもの、すぐに作れるものに注目したのです。ここがわれわれの会社のユニークな点です。

Q. ロモーティブのエンジェル投資家の中には、ザッポス創業者のトニー・シェイ氏もいますね。

A. ちょうどキックスターターにプロトタイプを出した後すぐに、トニーに知り合いました。われわれはその当時シアトルにいて、自分たちのアパートでロボットを組み立てていたんです。中国でサーキットボードをプリントし、シアトルでアッセンブルする。筐体はレーザーカットしたプラスティックを使っていました。組み立てが終わると近くの郵便局から発送していた。そんな作業を数1000台分やっていたのですが、トニーがラスベガスに来れば、製造工場もあるし、アパートもただで貸してくれるという(注:シェイ氏はラスベガスの都市開発にも関わっている)。それならば行こうということになったのです。今は第3世代の製造を行っていますが、製造は中国で、アイロボットのルンバと同じ工場で行っています。

Q. スマートフォンを頭脳部分に利用するというアイデアは、最近よく見かけるようになりました。参入者が増える中で、どうやって勝ち続けられるのでしょうか。

A. スマートフォンはロボットを変えています。ユビキタスに広まっている上、その小さなサイズの中にwifiチップ、ターボ・プロセサー、ディスプレイなどのすべての要素が詰まっている究極のデバイスです。これを利用すれば、ゼロから作ろうとするのと比べてコストは1%で済むでしょう。ただ、スマートフォンを利用するというだけでは勝てない。決め手はロボティクスの部分。これは、うまく実現するのが非常に難しいのです。使いやすくシンプルにするデザイン力、そして価格の点で手に入れやすい製品に仕立てたというポイントは、われわれの強みであり、これまでロボット会社ができなかったことです。

Q. テクノロジーそのものよりも、操作性なども含めてどうデザインするかが重要だということですね。

A. ウェブやモバイルの分野を見ても同じことが起こっていますが、ここ10〜15年間のイノベーションはテクノロジー自体よりも、それをどう使い勝手のいいものにするかという部分です。ツイッター、ピンタレスト、AirBnB(シェア型宿泊サービス)、どれを見てもそうでしょう。ロボットでも、ごく普通の人々の元に届ける気があるかどうかが、決め手になると思います。1台のロボットのプロトタイプを作るために何年間も多数の研究者が手をかけるのと、10万台を普通の人々に届けるのとは、まったく異なるアプローチが必要です。今や14歳の子供でもテクノロジーをハックしたり、場合によってはスタートアップを起業したりできるようになったのですが、そうした彼らは今までウェブやモバイルの分野へ行っていました。コストがずっと安いからです。ロモは、そんな彼らに初めてのハック可能なロボットを提供していると言えます。これによって、ロボットの分野で大きなイノベーションの渦が巻き起こることを期待しています。

Q. 現在18人のフルタイム社員がいるとのことですが、どんなバックグラウンドの人々ですか。

A. リシンク・ロボティクス社やスペースX、MITメディアラボ、アイロボット社などから機械エンジニアを雇っています。それぞれ、ロボティクスや素材分野で先端の開発に関わってきた人材です。エンジニアにとって、うちに来るというのは賭けだったでしょう。何10億ドル規模のビジネスに化けるかもしれないけれど、すぐにコケてしまうかもしれないわけですから。けれども、ロモがみんなが買える初めてのロボットであるということが、彼らにとって決め手になったようです。

Q. ロモーティブ社は、今後どのようにビジネス展開をしていくのでしょうか。次の新しい製品は何ですか。

A. 現在販売しているロモは第3世代ですが、すでに第4世代の開発に入っています。ロモは世代を追うごとに機能を10倍高めることを目標にしています。第4世代は1年内に発売する計画です。ここからロモーティブがどう進んでいくのか、まだわかりません。けれども、理論的には価格150ドルのロボットでも、非接触誘導充電や自律運転などの技術を盛り込むことが可能です。また、高度な顔認識機能で相手の感情を読み取り、それに併せて対応することもできる。そうなるともう、れっきとしたスマートペットです。テクノロジーは日進月歩していますから、かなりのことが可能なわけです。ただ、これまでの研究主導のロボットと違って、一般消費者のためのロボット開発では「人々の生活を向上させるためには何をすればいいか」というところから逆算してテクノロジー開発をすることが求められるのです。

Q. ロボットのテクノロジーの最先端情報にはどのように触れていますか。

A. ROSのようなオープンソースになっている部分もありますし、白書でかなりのことがわかります。別に誰も隠し立てしているわけではないので、どこでどんな研究開発が行われているのかはちゃんとわかるのです。もっとすごいブレークスルーもいずれ起こるでしょうけれど、現時点でもすでに優れたテクノロジーがある。われわれにとって、そして他のロボット企業にとってのチャレンジは、それをどう安定して使えるものにするかというところです。ですから、まずクールなテクノロジーがあり、そして製品や操作性でいいデザイン・センスを発揮し、さらに優れたビジネス・センスによってより多くの人々の手に製品を届ける流通網を作るという、その3点が揃っていなければならないのです。そこからさらにユーザーからデータのフィードバックをもらって、製品の向上に反映させていかなければなりません。

Q. 近々ラスベガスからシリコンバレーへオフィスを移転するとのことですが、なぜですか。

A. やはり、ロボット分野での優れた人材にアクセスできるようにするためです。シリコンバレーは、ボストン、ピッツバーグと並んでアメリカの3大ロボット拠点で、すでに2人をこの地域で雇っています。われわれの投資家もシリコンバレーにいますし、製品のアイデアをどうスケーラブル(拡張可能)にするのかについても、シリコンバレーにはその方法論がありますから。