アンバウンデッド・ロボティクス社のUBR-1は、ロボット開発を変えるか

話題のロボットUBR-1について、『IEEEスペクトラム』誌が開発者のインタビューを掲載している。UBR-1は、ウィロー・ガレージの最後のスピンオフであるアンバウンデッド・ロボティクス社(創設2013年1月)が先頃発表したもの。インタビューには、同社のメロニー・ワイズ(CEO)、マイケル・ファーガソン(CTO)、デレク・キング(主任システムズ・エンジニア)、エリック・ディーア(主任機械エンジニア)が答えている。その抄訳をお届けしよう。

アンバウンデッド・ロボティクス社の4人の共同創設者。左前から時計回りに、メロニー・ワイズ(CEO)、マイケル・ファーガソン(CTO)、デレク・キング(主任システムズ・エンジニア)、エリック・ディーア(主任機械エンジニア)(http://spectrum.ieee.org/より)

アンバウンデッド・ロボティクス社の4人の共同創設者。左前から時計回りに、メロニー・ワイズ(CEO)、マイケル・ファーガソン(CTO)、デレク・キング(主任システムズ・エンジニア)、エリック・ディーア(主任機械エンジニア)(http://spectrum.ieee.org/より)

Q.  UBR-1が他のロボットと比べて優れている点は?

UBR-1は先端型プラットフォームで、PR2と同様のパワフルな機能性があり、それでいて価格は10分の1に抑えた。PR2のアカデミック・コミュニティーは40大学ほどしかないのだが、それはコストが高かったからだ。しかし、値段が手頃になるとコミュニティーを100〜1000ユーザーの規模に拡大することができる。30年前のPC革命は40ユーザーでは始まらなかった。UBR-1によって、ロボット改革が可能になるのだ。

Q.  アームが1本しかないのか?

現在行われているリサーチの多くは、アームを1本しか使っていない。教授たちも、「よく考えると、1本のアームでも十分。必要ならば2本目を買えばいい」と言っている。コストの点でも利点がある。PR2のアーム1本だけで80ポンド(約36キロ)の重量があり、これはUBR-1の総重量160ポンド(約73キロ)の2分の1だ。

また、PR2の2本のアーム間は12インチ(約31センチ)に固定されている。小さな服などを取り扱うことはできても、ベッドにシーツを敷くといったことになると2台目のロボットが必要だ。そして、ロボットが2台あればアームの距離はいかようにもなる。また、アームが2本のロボットなら本体も大きくなり、いろいろなスペースを通り抜けたりするのが難しくなる。

Q.  競合するプラットフォームは?

商用化されていないが、ケア・オー・ボット(Care-O-Bot)は同様の機能を持つが、価格は38万ドルだ。バクスターも競合と言えなくないが、バクスターは可動式ではないので比べにくい。また、バクスターにはUBR-1と同タイプのセンサーは統合されていない。最近のROSはキネクトのようなデバイスが搭載されているのを前提としているのに、出荷されるバクスターにはそれがないので、後付けして外部コンピュータから操作するしかない。UBR-1の核心は「プラットフォーム」であることで、まとまりのあるプラットフォームにソフトウェアを統合し、大人気のROSのMoveIt!もついている。他にこんなロボットはない。

Robot - unbounded.2

(http://unboundedrobotics.com/より)

Q. それでUBR-1のユーザー・エクスペリエンスはどう向上するのか?

PR2にはナビゲーションがあったが、アーム・コントローラーはなく、リサーチャーが自分でプログラムを書いていた。MoveIt!があれば、リアルタイムの「ピック&プレイス(移載)」ができる。たとえばビジョンのリサーチャーにとっては、それは恩恵のはず。自分の研究に集中できるからだ。

Q. UBR-1にはグラスプ(把持)とナビゲーションなどの基本機能があるが、この後にもっと追加されるのか?

われわれの事業的展望から言えば、優れたリサーチ・プラットフォームを提供することが優先だが、企業と提携して棚に物を並べたり、容器を運んだりといった自動化アプリケーションも開発する予定だ。コミュニティーに基本機能の新しいスタンダードを還元することは、それと並行して行いたい。企業向けの仕事をすることで、ただ「優れたデモ」を超えて強固なソフトウェアが開発できる。高いレベルのアプリケーションを作ろうとしているリサーチャーにとっては、その下に強いレイヤーがあることは役立つはずだ。

Q.  UBR-1はリサーチ用ロボット? それとも商用化ロボット?

「プラットフォーム」だ! 最初はリサーチ分野へ向けて出されるが、それ以外の多くの応用分野がある。価格が安いので、技術移転ももっとやりやすくなる。PR2自動化の面では部屋を片付けるなどできたが、最終的には企業が40万ドルのロボットが買えるかどうかがネックになった。3万5000ドルならば、事業計画に盛り込んでもらいながら話し合いができる。UBR-1は製造以外にも、介護や接客サービスにも使える。ウィロー・ガレージにいた頃に、ロボットをルームサービスに利用するといった話をホテル関係者とやっていたこともある。そうしたことが、UBR-1ならもっと現実的になる。

Q. なぜUBR-1はこれほど安く作れたのか?

そもそもUBR-1は製造可能で、コストが安いことを目指した。部品も安くなった。キネクトがまだ存在しなかった時なので、PR2は顔についているセンサーだけでも5000ドルはした。また、PR2はもともと5つほど作るという見通しでスタートし、安くするための設計に時間をかけなかった。その意味もなかったからだ。PR2を経たことで、うまく機能しないものは排除して、安いバージョンが作れたということもある。

Q.  一方で、なぜまだこんなに高いのか?

汎用性に富んだ役立つプラットフォームを目指したためだ。もっと安くしようとすれば、特定の機能に絞って他を切り落とせたが、それでは何100人、何1000人がプログラムを書いてそれぞれの用途に役立てられるようにし、ひいてはその回りにアプリケーションのインフラができるということが起こらなくなる。それを起こすには、汎用的なプラットフォームが必要なのだ。

Q.  UBR-1には、頭にプライムセンス(PrimeSense)、そしてベース部分にレーザー・スキャナーという2つのセンサーがあるだけだが、いろいろなアプリケーションのためにそれで足りるのか?

Robot - unbounded.3

(http://unboundedrobotics.com/より)

足りる。ほとんどのリサーチャーは、結局キネクトを使っている。また、UBR-1はかなりモジュール式になっていて、さらに高度なセンサーが必要となれば装着し、USB 3.0コネクターでコンピュータにつなげばいい。グリッパーもモジュール式だ。やりたいことが80%できるようなグリッパーはついているが、制御型など他のグリッパーを使いたい場合は付け替えがきく。

Q.  UBR-1には2つバージョンがあるとのことだが。

その通り。リサーチャーが研究する空間は比較的狭いところだが、倉庫やスパーマーケットといった環境で利用する際には、距離の長いレーザー・センサーが必要になる。従って、後者のバージョンには30メートルのレーザー、より強力なプロセッサー、高速度を設定している。

Q.  なぜ世界は手頃な価格の可動マニュピュレーターを待ちこがれているのか?

テクノロジーの障害となるのは、コラボレーションができるかどうかだ。そして、テクノロジーを離陸させようとしても、デバイスが安くならなければ、コラボレーションを格段に増やすことはできない。ロボット分野では、PR2とROSのおかげで過去5年間で多くのコラボレーションが起こり、コラボレーションのためのソフトウェアも作られたが、ロボットが「異なっている」ことが障害となった。ロボティクスは、共通のプラットフォームや共通のソフトウェア・インフラがないことで発展を妨げられてきたわけだが、UBR-1があれば、何1000というラボがつながって、コラボレーションできるようになる。

Q.  次のUBR-2はどんなロボットになるのか?

現時点で限界要素となっているのは、ハードウェアではなくソフトウェアで、ひとつずつ実験されている最中だ。いずれソフトウェアが発展して、ハードウェアが限界要素になる日が来る。その時にUBR-2を考えるようになるだろう。UBR-2は、われわれがこれだと決めたアプリケーションを研ぎすませたものになるだろう。それは次のいずれの方向でもあり得る。ひとつは、プラットフォームを汎用性の点でさらに機能的にし、もっとカスタマイズやモジュラー構成ができるようにすること。もうひとつの方向性は、いくつかの特定アプリケーションに絞って、さらにコストを下げていくことだ。どちらになるかは、このプラットフォームから何が生まれてくるかにかかっている。