『ロボビジネス2013』会議レポート<その3> 基調講演から、重要ポイントを抽出

ロボビジネス2013』の基調講演は、業界の現状、課題などを知る上で有益な内容が豊富にあった。その中から、いくつかのポイントを紹介しよう。

『われわれは誰だ、これからどこへ向かうのか(What Are We? Where are We Going?)』と題した講演で、調査会社ミリアのダン・キャラ氏は、産業ロボット、サービス・ロボットのいくつかの分野での現状を分析した。

産業ロボットでの市場は現在260億ドルで、年間の出荷ユニット数は16億。これに対して、消費者向けロボット市場は12億とまだ小さい。しかも家庭用ロボットでの成長はほとんど見られず、ビジネスモデル上の問題があるのではないかと言う。この領域で最も大きな売上を持つのはアイロボット社で、これまでお掃除ロボットのルーンバを1億台売った。技術、マーケティングの点で必要とされるロボットを作った会社が成功し、また業界全体に大きな飛躍をもたらすことになる。

同氏がロボット市場を分類した次のスライドは多いに参考になる。

ロボット市場の分類図(Myria RAS)

ロボット市場の分類図(Myria RAS)

コー・ロボットのロードマップと課題

『アメリカのロボット産業の来るべき道(The Road Ahead for U.S. Robotics)』では、アメリカのロボット産業のロードマップ作成の責任者も務めたジョージア工科大学のヘンリク・クステンセン教授が登壇。そのロードマップを「コー・ワーカー(職場で一緒に働くロボット)」、「コー・ハビタント(一緒に暮らすロボット)」、「コー・ディフェンダー(兵士と一緒に働くロボット)」、「コー・エクスプローラー(宇宙探索に参加するロボット)」などの分野でわかりやすく解説した。

ロードマップは、各分野での5〜10年先の予測を示すものだが、重要なのは「そこへ到達するには、どんな技術が欠けているのか」を洗い出している点。また、どんな応用があり得るかも指摘している。ロボット関係者はぜひ一読されたい。

コー・ワーカーの分野では、ロボット導入が伸びているという。それによってアメリカに製造業が戻ってくる兆しが見られるとした。

コー・ワーカー・ロボットをもっと広めるために必要とされるのは、フレキシブルな機能性、強力な認知精度、プラグ・アンド・プレイのしくみ、フレキシブルなプログラミングの可能性という。また、コストの点でも、たとえばバクスターは2万2000ドルだが、これはあと5000ドル程度安くなることが求められると語った。

コー・ワーカー・ロボットのロードマップ。左が研究分野、右が市場で求められること。真ん中が市場化への課題だ。

コー・ワーカー・ロボットのロードマップ。左が研究分野、右が市場で求められること。真ん中が市場化への課題だ。

これから製造業の現場に入ってくる若者は、コンピュータ・ゲームで育った世代で、ジョイスティックやコントローラーなどの操作に慣れている。そうした彼らに合わせて、ロボットのユーザー・インターフェイスも変えていくことが必要という。

コー・インハビタント分野では、高齢者層の増加に伴ってヘルスケア関連のロボットが中心になる。医療、身体の喪失機能を補うもの、リハビリ、行動セラピー、パーソナルケア、健康保持といった領域が、ロボットが取り組む対象となるという。

コー・インハビタントの例。モノを取ってくれるロボット。メカ・ロボティクス社(Meka Robotics)のアイデア。

コー・インハビタントの例。モノを取ってくれるロボット。メカ・ロボティクス社(Meka Robotics)のアイデア。

運搬ロボットのタグをモニターする

ロボニュースでも取り上げたシリコンバレーのエル・カミーノ病院で導入されている運搬ロボット、タグに関する講演もあった。より細かな運営状況がわかった。

タグのように、施設内で運搬を行う領域を「イントラ・ロジスティック」と呼ぶのだそうだ。通常の配送のようなロジスティックスとは違って、限られた環境の中だけで運営されるものだ。だが、そこにも何を、どのくらい、いつ運ぶかといった細かな管理が必要とされる。

エル・カミーノ病院では20台のタグが働いているが、合計すると毎日200回の運転で200マイルの走行距離を自走しているという。タグの運行は刻々とモニターされ、それを評価してタグの導入数や運営方法を変えることもできる。時間ごとにどのタイプのタグ(ゴミ、食事、薬品、リネンなど)が何回呼ばれているかが表に表示され、呼ばれる数が高いと待ち時間が多いということなどもわかる。これらは、病院のバックエンドの運営の効率性を考える上で重要なデータだ。

タグの呼び出し数(縦軸)と時間(横軸)。

タグの呼び出し数(縦軸)と時間(横軸)。

タグ導入の結果、エル・カミーノ病院では1年当たりの37万7000ドルのコスト節約できたという。ただ、タグを提供するエーソン社は、コスト節約という表現ではなく、スタッフの手を解放して、より患者のために時間が割けるようにすることがタグの目的だと強調する。

また導入は、病院新設に合わせるのならば、なるべく早めに設計に組み入れるのが良策だと言う。というのも、シーツ類を保管しておくリネン室などの広さが、どれだけタグを働かせるかに左右されるからだ。もし、タグがしょっちゅう取りに行くことが可能ならば保管室は小さくて済み、他の重要な機能にスペースを割くことができる。

エーソン社の事業開発および製品戦略担当の上級副社長ピーター・シーフ氏に尋ねたところによると、同社は遠隔でエンジニアがソフトウェアのアップデートなどのメンテナンスや顧客用のカスタマイズを提供している。また、ハードウェア上の故障に備えて、タグ・ロボットは数台余分に納入しているという。故障を連絡し、エーソン社側から承認を得ると、病院側はフェデックスでタグをエーソン社に返送するという手順らしい。リースの料金は、1台当たり1500〜2000ドルとのこと。

 

自走車は人間ドライバーよりも安全運転?

グーグルの自走車担当ディレクターのクリス・アームソン氏は、自走車の歴史や、DARPAの自走車チャレンジ当時(2004〜2007年)の各チームの様子などをおかしく説明するところから講演を始めた。

話の中心は、現在グーグル自走車がレーザーLidar技術を利用して、回りの環境をどう認識するかといった内容。回りの環境を、建物か自動車か自転車か人かに分けて理解し、自動車も人もひとつひとつ個別にその動きや速度を認識できる。さらに予測に基づいて、衝突するまでにどのくらい時間がかかるのかといったこともはじき出す。

グーグルの自走車は、走行しながら回りの建物、車、人、自転車など個々に認識している

グーグルの自走車は、走行しながら回りの建物、車、人、自転車など個々に認識している

現在の自動車事故のほとんどは運転手の過失によって引き起こされているのだが、この技術はそうした運転手よりも安全なものになるはずだという。

 

そのロボット行為は違法です

ロボットが仕事場に入ってくることで、どんな法律上の問題が起こりえるかについて講演したのは、法律事務所リトラー・メンデルソンのゲリー・マシアソン氏だ。『職場革命:ロボットと法遵守(The Workplace Revolution:  Robotics, Compliance and the Law)』というタイトルだ。

同氏が最初に挙げた例は、NEC研究所とメルボルンのラ・トローブ大学の共同研究で生み出されたロボットのソフィー。ソフィーは相手の感情を感知することができる機能が搭載されており、高齢者の相手をするロボットとしても期待されている。

ソフィーは、企業の面接での利用も想定されている。質問に答える相手の目の動き、顔の表情、血圧などを感知して、相手の状態や性格などを推し量ることができるのだが、これがプライバシー侵害、遺伝子情報差別、障害者差別などの違法行為にあたる可能性もあるというのだ。相手のことを知る能力こをロボットに求められているのだが、場合によってはそれが違法になることもあるということだ。

また、移動しているテレプレゼンス・ロボットが、他人の文書などを盗み見してしまうということも起こり得る。これが、窃盗やスパイ行為などにあたることもあるだろう。

ロボットが持つAIや保存機能も問題になる。著作権のあるインターネット・データにアクセスすることや、二者間の会話を録音すること、あるいは国際間でのデータのやりとりが職場プライバシーの抵触となる可能性もある。

ロボットによって人の雇用が脅かされるようなことがあれば、労働組合との関係が取り沙汰されるだろう。また、ロボットを使いこなし、プログラムができるような人材がもし若い層に多いということになると、年齢差別の問題も起こる。ロボットによる事故が起こった場合、その管轄省はFDA(食品医薬品局)なのか、FAA(連邦航空局)、あるいはNHTSA(運輸省道路交通安全局)なのかについての区分けもまだない。

さらに面白いのは、テレプレゼンス・ロボットを通して仕事をする人は、いったいどの州の州法に則った労働を行っているかが不明という点。賃金や労働時間についての法律は州ごとに定められており、テレプレゼンス・ロボットの場合は人がいる州か、それともロボットのいる州なのかがわからないのだ。

ロボットがわれわれの生活に浸透して共存するようになると、ロボットのための幅広い法的整備が必要になる。マシアソン氏は、一見ロボットにとって否定的な要素ばかりが並んでいるように見えるが、逆にそれをうまく解決すれば、法律を遵守したことをロボットの売りにできるはずだと言う。