「シャフト」って一体何者? 『IEEEスペクトラム』が解説

昨年末のDARPAロボティクス・チャレンジ(DRC)で、他のロボットに大きく差を空けて1位を獲得した日本のチーム、シャフト社。「いったい彼らは何者だ?」という興味がアメリカでも大きく高まったのに、同社がグーグルに買収されて「取材ノー」を通しているため、どのメディアも詳しく伝えきれずにいる。

そこで『IEEEスペクトラム』が、同誌がかつて取材した内容などを振り返りながら解説している

まずは、うわさ話から。先月、ロボット業界を駆け巡ったのは「グーグルがシャフトをDRCの決勝戦に出さない」といううわさだ。

DRCでスイスイ瓦礫を歩いたシャフトのS-Oneロボット

DRCでスイスイとデコボコの地面を歩いたシャフトのS-Oneロボット

このうわさは、『ポピュラー・サイエンス』誌が伝えたもの。DRCに参加したある情報源によると、と断った上で、DARPAのような軍事関連組織と関係を持ちたくないグーグルは、DRCから身を引かせるのではないかというのだ。

シャフトは決勝戦に参加することでDARPAから100万ドルの開発補助金を受け、また最終的に1等を獲得した場合には、200万ドルの賞金を手にする。しかし、「Don’t be Evil.(悪になるな)」という社是を追求する姿勢を示すことをますます求められている昨今のグーグルにとっては、軍とのつながりを断ち、同社がロボット会社を合計8社買収した、その目的の達成を急ぐために、シャフトの方向転換を図るのではないかというのだ。(ちなみに、その目的が何であるのかはまだ不明。「ムーンショット(かなり先の未来的技術探求)」という表現が出ている一方で、商用化のための火急の開発の必要性も取り沙汰されている。)

『IEEEスペクトラム』によると、DARPAではまだシャフトの参加登録を受けていないとのこと。いつまでに締め切りなのかも不明なので、これが明らかになる時期もわからない。(ところで、当初の予定では決勝戦は2014年12月とされていたのだが、DRCサイトに昨年末に上げられていたリリースでは、「今後12〜18ヶ月の間に開催される決勝戦」という表現になっている。予定が先送りになる可能性もあり、だ。)

さて、この記事ではシャフト社の創設メンバーが在籍した東京大学の情報システム工学研究室(JSK)が、伝説的研究者の井上博允教授によってロボット研究の基礎を築いたことや、稲葉雅幸教授の元で2004年ごろから開発されてきた小太郎、小次郎腱臓腱志郎などの筋骨格ヒューマノイド・ロボットに触れている。

そうした中で同研究室の中西雄飛氏、浦田順一氏らが、2010年に発表した小型の水冷モーターと大出力のドライバー・モデュールで過熱なしに高スピードと高トルクを実現し、革新的なアクチュエーターを作った。

その後、筋骨格ではない従来型のヒューマノイド・ロボットにそのアクチュエーターを統合。川田工業製作のロボットの脚を改良してHRP3L-JSK(通称浦田レッグ)を生み出した。さらに研究室と産業技術総合研究所(産総研=AIST)のチームも関わってソフトウェア面でも改良を重ね、歩行パターン生成を可能にして、蹴られても倒れないロボットを生んだ。それらが、シャフトのロボットS-Oneの技術的基本と説明する。

ここからは、DRCに参加を決めた中西、浦田氏らが、大学では軍事関連組織から補助金を受けられないために起業、創業資金を得るのに苦労したことに触れていている。グーグルからの買収話があったのは、昨年半ばとのことだという。

シャフト社が開発した水冷モーターとドライバー・モデュール(http://spectrum.ieee.org/より)

シャフト社が開発した水冷モーターとドライバー・モデュール(http://spectrum.ieee.org/より)

シャフトのS-Oneの強みについて、これまでのヒューマノイド・ロボットの10倍の動力を実現して、ほぼ人間と同じ力を発揮できるようにし、またカナダのロボティクス社のグリッパーを採用したことを挙げている。さらに、利用されたかどうかは不明だが、HRP3L-JSKで用いた新しいタイプのコンデンサー・ベースの動力システムを使っていれば、高速に電流を供給できたはずだとしている。

ただし、そうしたハードウェアに加えて、DRCのタスクに合わせて徹底的に訓練したことも勝因だという。

今はトップページしか表示されなくなったシャフトのサイトにかつて載っていた、水冷式モーターとドライバー・モデュールの写真も再掲している。

決勝戦では、より自律性が求められるようになり、また実際の災害のように複数のタスクを次々にこなしていくことが求められる。他のチームももっと腕を鍛えて臨んでくるだろうし、ただタスクを済ませるだけのレベル以上のものになるはずという。

さて、シャフトは決勝戦に出てくるだろうか、と『IEEEスペクトラム』は読者に問いかけて記事を結んでいる。

いずれにせよ、もし補助金を受けずに、それでも決勝戦に参加したいということならば、その道はある。補助金を受けないトラックDチームとして参加し直すことだ。優勝しても、賞金を辞退するという手もあるだろう。それならばグーグルも「悪」にならず、クリーンでいられる。

すべては、グーグルの思惑が何かにかかってくるだろう。シャフトが予選と同じように圧勝すれば、世界に向けて技術力を披露してグーグルの宣伝になるはずだ。だが、そんな華より実を取るとグーグルが決めるなら、アマゾンに勝つためにせっせと現実的な開発に臨まなくてはならない。

もしそんなことになると、シャフト・ロボットの活躍を目にしたいわれわれにとっては、大層ガッカリな事態になるのは確かだ。