テレプレゼンスの向こうには何があるか。エニーボッツ社訪問記

実際に目にするまでは、テレプレゼンス・ロボットのQBに対しては先入観があった。車輪付きの台車に棒が刺さり、その上にプラスティックの頭が載っているようなロボットに親近感を覚えることはないだろう、と。

ところが、エニーボッツ社を訪れ、QBに案内されて社内を歩き始めるやいなや、そんな抵抗感はどこかへ飛んで行ってしまった。

その時のQBはちょっと小柄で、丸い頭のかたちにも愛嬌があり、すぐに馴染んでしまったのだ。棒が身体の代わりをしているのは確かに妙だが、全体のスケール感が人間に通じるのか、そんなことはすぐに気にならなくなったから不思議だ。

シリコンバレーのサンタ・クララにあるエニーボッツ社は、もともと2001年に創設された。現在は同社を離れているが、創設者のトレバー・ブラックウェル氏が最初に作っていたのは、遠隔操作が可能な2本脚のヒューマノイド・ロボットだった。ロボットはいくつかの世代を経て、車輪の上でバランスを取るテレプレゼンス・ロボットに変わった。

エニーボッツ社代々のロボット。手前からQA、QB、向こうふたつはQ(x)のプロトタイプ

エニーボッツ社代々のロボット。手前からQA、QB、向こうふたつはQ(x)のプロトタイプ

QBは、80センチから190センチ近くまで高さを調節でき、重量は16キロ。最高時速3.5マイル(5.6キロ)と、結構速く走行する。ジャイロスコープや加速器が内蔵されていて、しっかりとした走りだ。

頭部を押されると後ずさりするが、倒れることはない。棒の上に載っているにも関わらず安心感があるというのは、走行している時の方が強く感じられるくらいだ。

QBを操作しているのは、同社のビジネス開発担当のノーランド・カター氏。同氏とのインタビューは、このテレプレゼンス・ロボットを介して行うことになった。

同氏によると、QBはこれまで80台ほどが売れているという。企業や工場、クリーンルーム、病院、学校などが販売先だ。価格は1万ドル近い。

ビジネス開発担当重役のカター氏。スクリーンが小さいのが、ちょっと残念。目の部分は、カメラとレーザー・ポインター

ビジネス開発担当重役のカター氏。スクリーンが小さいのが、ちょっと残念。左目にはカメラ、右目にはレーザー・ポインターが内蔵されている。ログイン中は目が光る

テレプレゼンス・ロボットは、「中間の会話のためのもの」であるという。つまり、実際には会えないが、かと言って電話やビデオ会議のような存在感の感じられないものではない。その間を埋めるような存在というわけだ。

意外な利用方法は結婚式だったという。花嫁はニュージーランド出身。親戚や友人がみな渡米できたわけではなかったのだが、QBが結婚式やパーティー会場にやってきて、それを介してニュージーランドの友人たちも参加した。こうしたイベントなどへの貸し出しも、今後のビジネス・モデルとして検討中という。

ただ、5〜10年の間にテレプレゼンス・ロボットは競争が激化し、また市場が飽和状態になると、カター氏は予測している。そうした時、単なるテレプレゼンスを提供するだけでは価値を提供できないという。

同社が構想している次世代のテレプレセンス・ロボットは、オープン・プラットフォームの上に、提携ユーザーの必要性に応じて多様なソリューションを加えるモデルだ。

操作画面。こちらにはロボットの目に映る風景が、スクリーンいっぱいに見える。キーボードで操作して走行させる

操作画面。こちらにはロボットの目に映る風景が、スクリーンいっぱいに見える。キーボード上の矢印キーで操作して走行させる

たとえば、教育現場ならば、テレプレセンス・ロボットで授業に参加する生徒が挙手できるしくみや、先生とプライベートに会話できるしくみ。また、医療現場ならば、検査機器を接続して、その数値をモニターするといった使い方が考えられる。高齢者ケア、教育、医療、小売が、ターゲットとしている市場という。

折しも、エニーボッツ社はポリコム社の会議システムを統合した、新型のテレプレセンス・ロボットQ(x)を開発中だ。このモデルは、スクリーンを複数つけることも可能で、スクリーンのひとつはタッチスクリーンとして情報をやりとりしたり、機器を接続したりすることもできる。そこで得られたデータをクラウド上でリアルタム分析するような構想も描いているという。

Q(x)のプロトタイプ。ポリコム社の会議システムを統合

Q(x)のプロトタイプ。ポリコム社の会議システムを統合

「テレプレゼンス・ロボットは、価格を安価にする方向に向かっていますが、わが社はその逆の戦略を取っています」と、カター氏は説明した。

テレプレゼンスする向こうに、さらに求められるのは何か。一般消費者はまだテレプレゼンス・ロボットを物珍しく見ているが、エニーボッツ社のような開発会社はすでにずっと先へ向かって走り出している。