「ロボットによって職を奪われることはない」。マーク・アンドリーセン流未来の見方

ブラウザーを発明し、ネットスケープ・コミュニケーションを共同創設。そして現在はベンチャー・キャピタリストのマーク・アンドリーセンが、自身のブログで「ロボットによって人間の職業が喰い尽くされてしまうことはない」と語っている

ロボットが人間のすべての仕事を奪ってしまうことはないと言うマーク・アンドリーセン氏Photo:  Joi Ito (CC By 2.0)

ロボットがすべての仕事を奪ってしまうことはないと言うマーク・アンドリーセン氏   Photo: Joi Ito (CC By 2.0)

彼の説の根底をなすのは、必要とされる仕事の量は決まっているのではないという考え方だ。つまり、経済学者ミルトン・フリードマンが主張したように、人間の欲求と需要は無限で、そのため常にやるべきことが増えるというもの。

そして、たとえそれによって職を奪われることがあっても、テクノロジーの変化を拒むことはないのが消費者だと説明する。その理由は、テクノロジーの変化がよりよい生活をもたらし、根本的な問題を解決するからだ。

同氏は、テクノロジーの変化と職の消失を怖れる人々には、次のような方策に目を向けて欲しいという。

  1.  教育やスキル向上へのアクセスを簡単にすること。それ自体がテクノロジーによって提供される。
  2.  資本と労働が素早く新たな産業と労働を生むように、市場原理を活用せよ(自由意志による契約と自由貿易)
  3.  強力な社会的セイフティーネットを構築し、人々が立ち往生して家族を養えなくなったりしないようにする。セイフティーネットは、高速のテクノロジーの発展が生産性を上げて、経済成長を生むことで可能になる。

アンドリーセン氏は、ロボットが労働に携わるようになるとモノが非常に安くなり、その結果人々の生活レベルは向上すると見ている。現在でも、すでに農業や産業でロボットが使われていなければ、われわれの生活レベルはもっと低いところに留まっただろう、と。

そして、未来世界で同氏が強調するのは、非物質的な生産を担う人間の働きだ。

ロボットや素材合成機が家、エネルギー、ヘルスケア、食物、交通といった物質面での生活を無料で提供するようになる。その時、人間の野心やゴールは無形のものに向かうという。それは、文化、アート、科学、クリエイティビティー、哲学、実験、探検、冒険だ。そこに達するのに時間を遅らせれば、問題は大きくなると同氏は考えている。

そして最後に、ロボットが職を奪わない理由を4つ、以下のようにまとめている。

  1.  ロボットとAI(人工知能)は、われわれが希望するほどのレベルに達するのにまだまだ時間がかかる。
  2.  ロボットとAIがかなりパワフルになっても、人間しかできないことがたくさんある。クリエイティビティー、イノベーション、探検、アート、科学、エンターテインメント、そして他人を気遣うこと。これらを機械が担える方法はない。
  3.  自動化が広がって安くなると、人間の体験が貴重なものになる。それは人間としての生来のあり方から生まれてくるもの。すでにその兆候はある。録音された音楽の価格がゼロに近づく中で、ライブ・ミュージック・ツアーのビジネスは爆発的に拡大している。ありきたりのコーヒーが安くなる中で、手の込んだグルメ・コーヒーが売れている、など。こうしたことがもっと多くの消費者に広がっていく。
  4.  ちょうど現在のわれわれの仕事が100年前には存在しなかったように、100年後には想像もつかない仕事が生まれている。

どんな産業、ビジネス、仕事が未来には生まれるのか、われわれには思いもつかないが、それがたくさん生まれることは確かだとアンドリーセン氏は言う。もし、ロボットとAIが現在の人間の仕事を肩代わりするようになれば、未来にはロボットとAIが可能にした人間の力によって新しい領域と仕事が生まれている。したがって、人間がもう何もすることがなくなるという主張は、人間のクリエイティビティーを軽視している、と。

実に説得力のある見方である。そこへの道のりは混乱することはあるだろうが、アンドリーセン流の未来はおもしろそうだ。