「アップルとグーグルとピクサーを合わせたようなロボット会社になりたい」。Jibo(ジーボ)生みの親、シンシア・ブラジル准教授インタビュー その(2)

「世界で初めての家庭用ロボット」を謳うJibo(ジーボ)。あと10日を残すクラウド・ファンディングでは、3150人のサポーターがつき、目標額の15倍近い144万5500ドル(約1億4450万円)が集まっている。ユーザーとことばでやりとりし、ユーザーの生活を助けてくれるロボットが、499ドル(約5万円)で予約販売中だ(国外発送には50ドルを追加)。

その開発者であり、マサチューセッツ工科大学メディアラボで教壇に立ち、そして新しいマイジーボ社のCEOであるシンシア・ブラジル准教授にインタビューした。ジーボの開発の狙い、今後の計画について聞いた。その(1)から続く。

Robot - C_Breazeal

シンシア・ブラジル准教授とジーボ。(http://www.myjibo.com/より)

Q.  ディベロッパーにはどんなアプリを開発してもらいたいと思っていますか。

A.  ジーボが人とやりとりするのならば、何でもありです。われわれはロボットを開発するものの、すべてのアプリを出せるわけではありません。その部分は、ディベロッパーのコミュニティーに任せたい。たとえば、日本やアメリカなどの高齢者向けに生活をサポートするロボットにもなれるでしょう。出かける時にタクシーを呼んだり、映画の予約をしたり、新鮮な野菜を配達してもらったりするといったことを、ジーボが代わりにやってくれる。また、ゲームをしたり、ジーボを通して家族と話したりもできる。ジーボはツールではなくヘルパーとして考えられているので、タブレットよりもずっとパーソナルで楽しい方法でやりとりできます。孤独は高齢者の深刻な問題ですが、ジーボを使った人からはジーボがいると孤独を感じないと言われました。

Q.  子供の教育にも利用できるという設定ですね。

子供に絵本を読んで聞かせることもできるらしい

子供に絵本を読んで聞かせることもできるらしい。

A.  子供の学習のコンパニオンとしてパーソナライズすることもできます。外国語を勉強するのにもいい。これまでの研究で、細やかなインタラクションがあれば、ロボットをコンパニオンとした学習の成果や反応が向上するということがわかっています。そういう存在です。

Q.  ジーボについては、すでにユーザー・テストを行っておられるのでしょうか。

A.  初期のプロトタイプで、限られたフォーカス・グループの間でテストを行いました。来年ベータ版で、小児科医院、養老施設、家族などのユーザー・テストをする予定です。

Q.  AI(人工知能)機能は、どんなところに盛り込まれているのでしょうか。

A.  パーソナライゼーションの部分で、個人の顔や声を学ぶ部分。また、スキルの一部でユーザーに合わせてパフォーマンスを変える部分です。ただし、AIと言っても、Siri(シリ)で明らかなようにすべてができるわけではありません。ですからジーボは、「自分はロボットでこれだけのことはヘルプできるが、他はできない」ということを明らかにするようにしています。感情を理解しコンパニオンとして役に立つけれども、万能ではない。ジーボがマルチモーダル・インターフェイスを備え、タッチ、顔認識、音声認識、ジェスチャー認識など多様な方法でユーザー側の状況を理解できるのも、助けになります。これは非常に重要な点で、ただの音声やタッチだけというインターフェイスでは、うまくやりとりができずユーザー側に不満が残るのです。

ジーボはユーザー個々人の顔認識をする

ジーボはユーザー個々人の顔認識をする。

Q.  ジーボが万能だとユーザーが勘違いしないように、どんな方策をとりますか。

A.  正直に透明にそれを伝えるのです。ジーボは箱から出したその時に、「あなたと仲良くしたい、私のことも知って欲しい、できるのはこれこれです」ということを明らかにするようにします。また、ツールであれば人は万能であることを期待しますが、ユーザーとのコラボレーションで成り立つものであると設定すれば、ユーザーはロボットをパートナーと捉えて助け合い、ロボットとのやりとりが成功するよう努力する。「もっと大きな声で話して下さい」とか、「それを見せて下さい」とロボットが伝えると、ロボットが半分のところまでやってきて助けを求めていると理解し、それを評価するのです。これは人間の社会心理に依る方法で、これまでのロボットとは異なったパラダイムの下に想定されているのです。

Q.  セキュリティーやプライバシー問題での懸念もあります。

A.  懸念があるのは当然でしょう。ジーボではセキュリティーを完全にするために開発をしています。また、プライバシー面では、たとえば写真を撮る際にはそちらを向くといった、わかりやすい合図を示すようにするなど、ポリシー面での詳細は今検討を重ねているところです。

Q.  ジーボの一般消費者への発売は2016年になってからですが、今から1年以上も先のことです。その間に、他のロボット会社に先を越されてしまうことはないでしょうか。

A.  この手のロボット開発は簡単にできることではありません。大学を卒業したばかりの学生たちが、すぐに作ろうと思ってもなかなかできない。深い専門知識と経験、そして資金を調達する腕が必要だからです。それでは大企業ならばできるだろうと言うと、それはまた難しい。なぜなら、非常にユニークな技能と洞察力のミックスが必要とされるからです。ジーボでは、多様な分野から優れたメンバーを集めて、いいチームを作りました。発売後に同じようなロボットを開発する会社は出てくることはあるでしょうが、その前に追いつかれることはないと思っています。ちょうどアップルが、製品では最良のエクスペリエンスを提供し、回りには最大のディベロッパー・コミュニティーがあるためになかなか突き壊せないのと同じような会社になりたい。

Q.  ロボット業界のアップルのようになるのが夢ですか。

A.  今はまだ存在しないような会社になるはずです。アップルとグーグルとピクサーを合わせたロボット会社のような。つまり、ピクサーのようなコンテンツとエクスペリエンスを提供し、グーグルのようなコンピュータ科学とデータ分析能力を持ち、アップルのようなデザインとユーザー・インターフェイスの開発力を併せ持つ。それをソーシャル・ロボットで実現するのです。

Q.  これまで2700個が予約販売されたとのことですね(7月30日時点)。

A.  まだ日本向けにはあまり売れていないようです。2015年のリリース時点では、音声認識はアメリカ英語が中心となるので、それも理由かもしれません。けれども、それ以外にも多くの機能があって、ジーボとやりとりができます。オープン・ディベロッパー・プラットフォームを提供しますから、そこで翻訳アプリを開発してもいいでしょう。ジーボの動きもデザインできます。すでに大学から研究所からは多くの予約注文が入っているので、ジーボは共通開発プラットフォームとしても有用になるはずです。日本でも、ジーボを使ってソーシャル・ロボットをさらに先へ進め、現実世界のコンテキストの中で大きな機会を手にしてもらいたいと思っています。

Q.  ジーボ開発で起業家になられたわけですが、その感想は?

ジーボの開発風景。(http://www.myjibo.com/より)

ジーボの開発風景。(http://www.myjibo.com/より)

A.  とっても忙しい。けれども、とてもワクワクしています。10歳の頃に映画『スターウォーズ』を観て以来、ずっとロボットを作りたいと願ってきました。今や、いいロボットはどんどん現実世界に出てきて、人々を助けなければなりません。大学の研究ではアイデアがかたちづくられますが、それを現実世界にどう活かすのか。15年間研究を続けてきて、ソーシャル・ロボットという特別なテクノロジーを世に出すのに今ほど最適な時はないと信じています。