『ロボビジネス2014』会議レポート<その3> その他いろいろトピック

ロボビジネス2014』会議、最後のレポート。同会議は盛りだくさんで、すべてをお伝えすることはできないのだが、目についたものをかいつまんでレポートしたい。

まず、基調講演のひとつで登壇したNASAのジョンソン宇宙センターのロバート・アンブローズ氏は、同センターで開発中のロボット技術を解説した。その中には、かなり高低の激しい地表面もよじ登って行く12輪のロボティクス・ヴィークル、回転や水平移動を難なくこなすモデュラー・ロボティクス・ヴィークルの様子も公開された。いずれの車も前後の区別がないという。

NASA JSC で開発中の16輪ヴィークル

NASA JSC で開発中の12輪ヴィークル

さらに興味深かったのは、現在国際宇宙センター(ISS)で活躍するロボノートである。ヒューマノイド型のロボノートはこれまで上半身しかなかったが、今年になってROSで開発された脚部分が送られている。そのシミュレーション画像と実撮画像が公開された。

ロボノートの脚は「モンキー・フィート」という呼称がついているらしく、その名前の通り長く伸びて、足先はまるで手のようにモノをつかむことができる。ISSの内部、外部に設置されたレールをカメラで認識して、そこにガッチリと脚をロックしながら移動するようだ。脚が伸びるさまはリボンのようにヒラヒラするのだが(無重力のせい?)、それでも確実に移動をこなす。ヒューマノイドなのに、これまで見たこともない動きである。

NASAのロードマップには、火星探索のためにロボットを利用することが盛り込まれている。そこでは、人間が到着する前にロボットが先に移り住んで、人間のために準備を整えるという段取りも計画されている。人間とロボットが協力する未来像だ。

ロボットは火星に先に降り立って、人間到着の準備をする

ロボットは火星に先に降り立って、人間到着のための準備をする

元カーネギー・メロン大学教授で、現在は戦略立案会社のニューエッジ社CEOのパム・ヘンダーソン氏は、ビジネスとして成功させたいのならば、ロボット開発者は「機会(opportunity)」を探り特定する訓練をしなければならないと強調した。

機会とはアイデアではなく、「市場の需要」と「技術が生み出す価値」、そして「状況」という3つの要素によって成り立っている。アイデア自体は、機会の池で泳ぐコイのようなもので、それ自体では成功を手にすることはできないのだ。

同氏が例として挙げたのは、病院用運搬ロボットの開発会社として注目を集めているエーソン社。まず、アメリカの医療費が高騰する中でコストカットが求められており、また病院内で薬品の3%がなくなってしまうという実態など、自動化への需要があった。そこへエーソン社のロボットは、自動化だけでなく、既存の施設を改造することなく導入が可能で、フレキシブルに組み合わせができるという価値も加わる。状況として、病院ではすでにIT 部門や薬剤部門などの組織化ができていたことも役立ったという。

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「機会の見極めこそ重要」と言うパム・ヘンダーソン氏

「こうした時に考えるべきは、自社のビジネスモデルではなく、病院側のビジネスモデル」であるとヘンダーソン氏は言う。また、自社とロボット会社としてとらえるのは危険で、医療関連機器開発会社や家庭設備開発会社などと、対象とする業界の名前で自社の役割を位置づけることが大切だと語る。

「大企業ならば、最終的に製品化されるのは2つで、さらにヒットになるのはそのうちのたったひとつであっても、何1000ものアイデアをとりあえず生かしておける」と同氏は言う。だが、スタートアップやロボット会社の場合はそうはいかない。それだけに機会の見極めが重要ということだ。

MITのアンドリュー・マカフィー教授は、共著書である『機械との競争(The Second Machine Age )』の中で人間がロボットやAIに職を奪われることを記して話題になった人物。基調講演では、その経緯をわかりやすく説明した。

MITのアンドリュー・真家フィー教授

MITのアンドリュー・マカフィー教授

今、起こりつつあるのは、本来人間が得意だったパターン認識や複雑なコミュニケーション、統合力などが機械にとって代わられるということ。その結果、従来のように技術の進歩によってすべてのものが一緒に上昇するのではなく、分化していくという。特に顕著なのは、低スキル、中間スキル、高いスキルの人間の中で、中間スキルの人間が機械に置換されてしまうこと。そして低スキルの人間は、機械化できない労働を行う一方で、高スキルの人間、ことにギーク(テクノロジーの専門家)は栄えると予測する。

社会の変化は大きく、企業経営者も大きな変革を迫られるが、それもある程度までの未来までであって、その後がどうなるかは同教授らにも予測がつかないという。

ムーアの法則は引き続き有効で、データは大きくなり、ギークが栄える。だがその後はよくわからない、と。

ムーアの法則は引き続き有効で、データは大きくなり、ギークが栄える。だがその後はよくわからない、と。

 

家庭ロボットのジーボ(Jibo)を開発したシンシア・ブラジルMIT 准教授も登壇した。

MITのシンシア・ブラジル教授

MITのシンシア・ブラジル教授

同教授は、これまで研究してきたいくつものソーシャル・ロボットを使い、ロボットというかたちやコンパニオンとしての存在が人間にどんな作用をするかについて、かなりの調査をしてきたようだ。ロボットに感情的つながりを持てたか、子供の学習に役立ったか、運転の情報提供に効果的だったか、ダイエットに際して自己コントロールのサポート役が果たせたかなど、その調査内容と結果が詳しく報告された。

子供の学習コンパニオンとしてのロボット

子供の学習コンパニオンとしてのロボット

だいたいにおいてロボットは期待された成果を出したが、複雑な側面もある。たとえば、幼い子供がロボットを学習コンパニオンとしてことばを習得するケースを調べた結果、簡単な言語構造を中心とする前半の4週間ではロボットのいる方が向上するが、後半ではもともと言語能力が低い子供は向上するものの、高い子供では返って学習成果が低下した。今後の考察が必要という。

ブラジル教授はまた、現在のロボット市場を見た場合、ソーシャル・ロボットがまだ存在していないことを指摘。そこにジーボを投入する。そして、これまでのような民主的ツールとしての機械ではなく、もっとハイタッチな感情のあるロボットが必要とされると強調した。

感情があり多機能(右上枠)というロボットは、まだ存在しない。そこがソーシャル・ロボットの位置

感情があり多機能(右上枠)というロボットは、まだ存在しない。そこがソーシャル・ロボットの位置

ロボニュースでも、ブラジル教授にインタビューを行っている。<その1>と<その2>をご覧いただきたい。

 

ところで、この『ロボビジネス2014』では、会議に先立ってロボット・スタートアップのピッチファイア(コンテスト)も行われた。15社以上が参加し、最終的にトップ3社に選ばれたのは、以下:

1位: n-Link社 (建設現場で、天井などのドリル作業を行うロボットを開発)

2位:ゼン・ロボティクス社(AIを利用して、ゴミを分別するロボットアーム開発)

3位:ソフト・ロボティクス社(ハーバード大学の研究から生まれたソフト・グリッパー開発会社)

ピッチファイアに参加したロボット・スタートアップの面々

ピッチファイアに参加したロボット・スタートアップの面々