愛らしいペッパーの陰で、アルデバラン社は心配な状況なのか?

日本の家庭に入ってくる初めてのかわいいロボットとして、ソフトバンク社のペッパーには注目が集まっている。人の心を捉えて離さないあの目も魅力のひとつ。

ところが、ペッパーの技術を生み出したアルデバラン社の内情はそうハッピーでもなさそうなのである。フランスの起業ブログ『ルード・バゲット』が伝えている

ペッパーが生まれた会社、アルデバラン社はトラブル中?(http://www.aldebaran.com/より)

ペッパーが生まれた会社、アルデバラン社はトラブル中?(http://www.aldebaran.com/より)

『ルード・バゲット』は、アルデバラン社の元・現社員にインタビューをしてこの記事をまとめている。ソフトバンクに買収された同社は、フランスのスタートアップ、そしてロボット開発者の希望の星とも言える存在だ。それなのに、一体同社に何が起こっているのか。

記事によると、最初にアルデバラン社で異変が感じられたのは、2013年にソフトバンクが同社を1億ドルで買収したすぐ後だった。同社に古くからいる社員が辞め始めたのだ。

買収後起こったのは、ソフトウェア開発がソフトバンク社内に移管されことだ。それによって、アルデバラン社のソフトウェア・チームのかなりの人間が辞職。その中には、ソフトウェア・リリースのディレクターやソフトウェア・エンジニアリングのディレクターも含まれていたようだ。

加えて、今年だけでもアルデバラン社のCTOが3人も交替しているという。中には、ペッパーの開発状況に不満を抱いてという理由もあったようだ。

関係者が明言しているのは、親会社ソフトバンクと子会社アルデバラン社の間に意見の食い違いがあるということ。ソフトバンクの社風の違いが理由とする向きもあれば、アルデバラン社の経営層(特に創設者兼CEOのブルーノ・メゾニエ氏)を責める人々もいるらしい。

メゾニエ氏は、ヒューマン・コンピュータ・インターフェイス分野で尊敬を集める存在。それなのに、ペッパーではヒューマノイド・ロボットとして役に立つアプリケーションを開発するどころか、人間の方がロボットに調子を合わせるように仕向けようとしているという。

ソフトバンクの規模が巨大で、社内がオーガナイズされていないことも問題視されている。そうした中で両社の意見が分かれたために、アルデバラン社側のR&Dチームが何週間もかかってやったことが台無しになったりした。

ペッパーの発表までは、ソフトバンクはアルデバラン社がロボット業界のグローバル・リーダーになると信じていた。しかし、アルデバラン社はR&Dで金を失い、当時もうひとつのロボットのナオが学校や研究所対象にしか売られていなかったこともあり、プロジェクトが壁にぶつかるのは時間の問題だったという。

同社社内では、アルデバランのリソースが流出していくことについて陰謀説も噂されたようだ。今年6月のペッパーの発表会の際、ソフトバンクの孫正義氏、メゾニエ氏と一緒に並んでいたのは、製造請負会社フォックスコン・テクノロジー・グループ会長のテリー・ゴウ氏だ。ソフトバンクがアルデバラン社のハードウェア開発に関わる情報をフォックスコンに流し、アルデバラン社を開発サイクルから締め出そうとしているのではないかというのだ。

「パラノイア的に考えれば、フォックスコンがハードウェアを盗み、ソフトバンクがソフトウェアを盗んで、アルデバラン社はカラカラになった」とある社員は述べている。

Robot - pepper.3

現在、アルデバラン社は雇用凍結状態にある。同社は、2012年にソフトバンクによる投資資金を受けた(ソフトバンクは、同社株の75〜80%を取得)。ソフトバンク向けにペッパーのデモが行われたのもその時。その後、アルデバラン社は急速に採用を増やし、130人まで社員が膨らんだ。ところが、ペッパー発表後の今年7月には、社員の25%がカットされたのだ。

ソフトバンクは、ペッパーを除くあらゆるものに予算カットの目を向けているという。アルデバラン社が同社最初のロボットである「ラビット」の開発を中止した時は、誰も不満を言わなかったが、今度はナオがその目に遭うのではと社員は怖れているようだ。ペッパー開発の途上においては、ナオは必要コストだった。しかし、ペッパーが世に出た今、ナオの存続を保障するものはない。

ただ、それでもアルデバラン社は依然として、ペッパーや他のロボットのデモ用のタスクをプログラムする面では優れているという。だが、現在のペッパーは、ちゃんとした製品になるのに必要な機能のほんの一部しかこなせない。またペッパーは、ソフトバンクや同社と親密な企業(日本のネスプレッソのような)の店頭でしか用いられないとも聞いたと、同記事は述べている。

フランス生まれのスタートアップで、他にない技術を持っていたアルデバラン社。同社は、家庭を牛耳るグーグルのような存在になり、ロボットを動かす大きなアップ・ストアーを構築してアップルのような存在にもなれたはず。だが、その代わりに金を浪費し、R&Dの成果やアカデミックな野望を商業的に成り立つ製品に作り上げることができず、親会社は金を出した以上のものを、上層部だけのやりとりで手に入れたと、同記事はまとめている。

ソフトバンクは、アルデバラン社の損失を償却している。そして、関係者らは、アルデバラン社側の経営層に大きな交替がない限りは、同社が復活することはないと見ているようだ。