ペッパーはどうやって生まれたのか

『IEEEスペクトラム』が、ソフトバンクに買収されたアルデバラン・ロボティクス社がどうペッパーの開発に至ったのかを紹介している

ペッパーの名前はアメリカのロボット関係者の間でもよく知られているが、まだ未上陸。しかし、こうした記事が出るのは期待度は高いということだろう。

パリのアルデバラン・ロボティクス社でテスト中のペッパー(http://spectrum.ieee.org/より)

パリのアルデバラン・ロボティクス社でテスト中のペッパー(http://spectrum.ieee.org/より)

記者はパリのアルデバラン社で実際のペッパーと会話を交わしたらしい。最初は英語がわからなかったが、担当者がフランス語から英語に切り替えるようペッパーに告げたところ、英語もわかるようになったとのこと。すでに日本語、英語、フランス語、スペイン語に対応するようだ。ただし、ペッパーを見つめながら、ゆっくりとはっきりと話すよう指導されたという。

ソフトバンクがロボットへ関心を持ち始めたのは4年前。視察のために、担当者を世界のロボット開発会社に送ったという。小さな企業でしかないアルデバラン社が注目されたのは、ロボットのインタラクティブ性が優れていたからだ。

アルデバラン社が販売していたナオは、世界70カ国の学校や研究所、病院に6000台以上納品されていた。また長期的には、ロメオという1.4メートル高のヒューマノイド・ロボットの開発にも取りかかっていた。

ロボットの最も重要な役割は、人間の心情的なコンパニオンとなって人々の生活の質を向上させることと信じるアルデバラン社創業者兼CEOのブルーノ・メゾニエ氏は、ソフトバンクの孫正義氏と会って、ロボットをラボから毎日の生活に移行させるべきだという見方で意気投合した。「一緒に取り組めば世界を変えることができる」とメゾニエ氏は感じたという。

2012年初頭にソフトバンクはアルデバラン社の過半数株を買い取って開発のサポートに乗り出したが、それはこれからペッパーに全力を傾けなければならないことを意味していた。

最初のプロトタイプ開発のために許されたのは3ヶ月。またその後2〜3ヶ月おきにデモが求められた。開発チームは、ナオのテクノロジーを拡張してペッパーに搭載するというアプローチを採った。たとえば、ナオのジョイントのメカニズムはペッパーに流用する。そうしなければ間に合わなかったという。

ペッパーには、どの程度ユーザーの生活に役立つのか?(http://www.aldebaran.com/より)

ペッパーには、どの程度ユーザーの生活に役立つのか?(http://www.aldebaran.com/より)

ペッパーにはスマートでフレンドリーな外見がデザインされ、中には20台の電子モーター、インテル製アトム搭載のコンピュータ、カメラ2台、3Dセンサー、4台のマイクロフォン、12時間のリチウムイオン・バッテリーが組み込まれた。胸部分のタブレットは、ペッパーとインタラクトする別の方法を与えてくれる。

挑戦は、CPUをオーバーロードさせることなく、ペッパーの計算力を保つことだったという。ペッパーの機能を司るのは約20のソフトウェア・エンジン。遠くに人を見つけると「認識エンジン」が稼動して頭をそちらに向けて音を出し、存在に気づかせようとする。人が近くまでやってくると、今度は「会話エンジン」が始動。踊るようにと伝えると、「モーション・エンジン」が機能する。

アルデバラン社のチームが東京に出かけ、孫氏にペッパーをデモしたのは2012年4月。パッパーがダンスをして見せたところ、孫氏は顔を輝かせて「子供みたいだな」と言ったらしい。

その後2年間は、休日も返上で開発が続けられた。開発チームは一時500人にも膨れ上がり、パリだけでなく東京、ボストン、上海に散らばっていたという。2014年6月の東京での発表会に先立つ1ヶ月は、毎日数回リハーサルが行われた。

アルデバラン社は、ペッパーのシステムは高度に洗練されているわけではないと認めているが、今後改良を加えていく予定だ。さらに倫理や共感などの他の要素も盛り込む必要性を認識しているという。また、メゾニエ氏は感情エンジンをヒューマノイド・ロボットOSの中核に据えたいと希望している。

感情の計測に用いられるジュネーブ大学開発の「エモーション・ホイール」(https://www.aldebaran.com/enより)

感情の計測に用いられるジュネーブ大学開発の「エモーション・ホイール」(https://www.aldebaran.com/enより)

ソフトバンクはペッパーの価格を19万8000円と、かなり安く設定し、売上を狙っている。モバイルで採ったのと同じように、損失が出てもボリュームを拡大してコストを下げる戦略だ。

だが、同記事は特に日本国外の消費者がペッパーを有用と認めるかどうかは不明だとしている。他にも、「役に立つ仕事ができない」、「消費者向け製品としてはロボットは苦戦する」、「ソフトバンクはペッパーの機能を過剰にアピールしている」、「感情認識能力は、がっかりもの」といったレビューや意見を紹介している。

一方、日本では昨年9月に開発者会議が行われて1000人が参加。そのうち600人がペッパーを予約した。メゾニエ氏は、ディベロッパーらによってペッパーの新しい機能を付け加えられていくことを強調している。

アルデバラン社は、既存ロボットに加えて新たなロボットの開発にも乗り出す。これはソフトバンクもサポートしている動き。どんなロボットになるかは不明だが、銀行、保険、小売業界と意見交換を行っているという。

メゾニエ氏は、「ペッパーは、これから起こるロボット革命の走り」と、次のように語っている。「みんなロボットが欲しかったのに、なかなか出てこなかった。待ち望んだロボットを、われわれが提供する」。

下のビデオでは、フランス語や英語を話すペッパーが見られる。