2014年たまっていたイベント・レポートまとめ<その10>オートディスク・ユニバーシティー(AU)で見かけたロボット

遅れていた2014年のイベント・レポートのまとめが、まだひとつ残っていた。これが最後。12月初頭にラスベガスで開かれたオートディスク社の恒例の年次イベント「オートディスク・ユニバーシティー(AU 2014)」である。

AUでは、オートディスク社の新しい技術を学び、情報交換をしにやってくるユーザーが多数集まる。今回興味深かったのは、オートディスク社が「生成デザイン(Generative Design)」という未来的なコンセプトを打ち出したことだ。同社CTOのジェフ・コヴァルスキー氏は、「オートディスクに在籍した9年間でもっとも大きな変化を目前にしている」と語っていた。これはロボットとも決して無関係ではない。

「オートディスク・ユニバーシティー(AU 2014)」に集まったユーザー

「オートディスク・ユニバーシティー(AU 2014)」に集まったユーザーたち。こんなに多数

生成デザインとは、生き物が自らを作り出す自然の方法をまねるもの。これまでのデザインや設計方法は、死んだ部品を組み合わせるようなものだったが、生成デザインはそこにあるべき構造やかたちがそこから生まれてくるようなアプローチだ。

とは言え、生物をゼロから生み出すわけではない。オートディスク社のリソース、あるいは入手可能なデータを利用し、コンピュータが自然の方法に則って次のデザインを生み出す方法を見いだすということだ。

たとえば、何100万という3Dモデルのデータを機械学習のアルゴリズムを利用して読み込めば、そこに生来のパターンが見いだされるだろう。そこからできることはふたつだ。ひとつは、要素や部品を自動的に分類すること。もうひとつは、それらの関係性を見いだすことだ。

ボルト、ギア、ベアリングといった類似性を捉えてそこにタクソノミー(分類学)が形成されるのだが、そこにコンテキスト(文脈)を与えることでそれらの用途や機能の情報が加わる。そうするとバラバラの要素がどう組み合わされて、どう機能するのかといったことが自動的に展開されるのだ。

オートディスク社と言えば、CADシステムを提供する会社。同社は、この生成デザインのアプローチが統合された暁には、エンジニアリングの原理や部品のカタログ、建築基準法、実世界での利用例などを学習、統合したシステムが、人間のパートナーとなって設計を手伝ってくれるような未来を描いているのだ。

コヴァルスキー氏がそこでデモして見せたのは、トルクをひとつの点から別の点に伝えるしくみを設計しているという状況だ。コンピュータはギア、リンケージ、滑車など可能な解決方法をいくつか表示する。そこでギアが最適となれば、今度はそのトルク伝達問題を解決するための多様なギアの構成方法を見せる。

コンピュータは、設計の意図に合わせて膨大な情報の中から最適解を表示するわけだ。だが、これはほんのスタート地点でしかないと、コヴァルスキー氏は言う。なぜならば自然には進化があるからだ。「コンピュータにどうしろと指図するのは、もう止めなければなりません」と同氏は語る。「そうではなくて、何をしたいのかを伝えるのです」。

人間の限られた知恵と情報の内側でコンピュータを操作しようとするのではなく、コンピュータに目的を伝えて、コンピュータが学習したあらゆる情報とデータが偉大なる探求のサポートをしてくれるようになるのだ。生成デザインというコンセプトは新しいものではないが、現在のコンピュータの計算能力のおかげで現実のものになりつつあると、コヴァルスキー氏は説明した。

さて、かなり壮大なビジョンなのだが、これはロボットにとっても無関係ではないだろう。

ひとつは、ロボットを設計する際にもこの生成デザインの方法が使えるだろうからだ。世界中の部品情報や研究、実証データを統合して、ロボット設計の問題を解決してくれるようなコンピュータが出てくる。

もうひとつは、こうした生成デザインにのっとって実際にモノを作る際にロボットが利用されるようになるからである。

オートディスク社CEOのカール・バス氏は、そうしたロボットの例をいくつか挙げた。

ドイツのアキム・メンゲス氏のプロジェクトでは、ロボットが生成的デザインの構造物を3Dプリントアウトしたり、フィラメントで組み立てたりしている。同氏のサイトを見るとクカ社が協力しているようだ。

 

また、オランダのジョーリス・ラーマン氏はロボット・アームを用いて家具などを3Dプリントしている。オートディスク社はラーマン氏と共に、橋梁を3Dプリントするプロジェクトを構想中だ。大規模なものをステンレスなどの金属を用いてローコストで製造する技術の模索だ。

オートディスク社がジョーリス・ラーマン氏と構想している橋をロボットが3Dプリントアウトするというイメージ

オートディスク社がジョーリス・ラーマン氏と構想している、ロボットが橋を徐々に3Dプリントアウトしていくというイメージ

もうひとつプレゼンテーションに登場したロボットは、下の森精機製作所のもの。同氏の説明によると、「複雑なジオメトリーの金属3Dプリンティングを、精密なCNCミリングマシン(コンピュータ数値制御切削機)と組み合わせたもの」とのこと。

Robot - au.2

さらに、以前ロボニュースでも紹介した工作ロボットのタクティア社についても言及していた。木工作業の切削の際に、マニュアル作業と自動作業を組み合わせるロボットだ。細かくて難しい部分になるとロボットが担当してくれるという、面白い分業作業ができる。

さて、AU 2014の展示会場にはこれまたいくつかロボットがいた。写真でご紹介しよう。

いきなり入口に設置されていたのは、これ。ただメモを取り忘れ、誰が作った何というロボットなのかが不明(スミマセン)。

日本好みな感じのロボットでした。

日本人好みな感じのロボットでした。

下は、アドバンスト・ソリューションズ社のバイオアッセンブリー・ボット。細胞を3Dプリントするロボット・システムで、再生医療研究での利用を目的としている。コンセプトとしては、内臓などの3Dモデルから再生箇所を特定し、その3Dデータをシステムに送信すると、ロボット・アームがハイドロゲルを材料としてプリントを開始するというもの。

ロボットがこうした生命科学でも利用されるという好例だ。

下の写真は、モードボット社のロボット。産業レベルのロボットの部品を誰の手にも入りやすいようにするというコンセプトで生まれた。

トロントのアーティスト兼デザイナー、ドクター・ウーフーの絵を描くロボット。以前水彩画ロボットをご紹介したが、こちらはペン画。これも美しいパターンだ。

Robot - au.6

 

そして最後は、義手を安く3Dプリントするオープン・プロジェクトの「イーネイブリング・ザ・フューチャー(Enabling the Future)」プロジェクトから生まれた義手。 Robot - au.8

イーネイブリングのサイトを見ると、3Dプリンティングでさまざまな義手が生み出されているのがわかる。

CADと言えば、これまでは堅い工業デザインや建築物を設計するツールだったが、3Dプリンターやロボットが統合されてどんどん動く、柔らかなものになってきた。そんなことを感じた。