ファースト・ロボット・コンペに参加する、高校生チームのある日曜日

全米の高校生を熱狂させる全米ロボット競技「ファーストロボティクス・コンペティション(FRC )」については、先だって簡単にお伝えした

毎年4月末に開かれる決勝戦へ勝ち抜こうと、全米のチームがロボットを設計し、手作りで組み立てて、動作に磨きをかけている。

そんなチームのひとつ「チーム100(Team 100)」の開発の様子を見に行った。

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出かけたのは2月初頭のある日。日曜日の朝だというのに、50人ほどの生徒と指導にあたる大人のメンターらが10人近く、ふたつの部屋に分かれて脇目もふらず作業中である。

チーム100は、シリコンバレーの北部にあたる地域の3つの高校(ウッドサイド高校、カールモント高校、セコイヤ高校)のロボット・チームが合体したものだ。もっとも古いところでは、ウッドサイド高校が1995年からファーストのロボット・コンペに参加してきたという。開発作業は、そのうちのウッドサイド校で行われている。

この日は、ロボット完成までに約10日を残した時点。ロボットの製作については、ファーストが厳しい決まりを設けており、ロボット製作に充てる期間も6週間と定められている。2月17日は「製作完了日」と決められ、その日の現地時間午後11時59分には作業をすべて終えて、ロボットを覆い、規定のタグで封印しなければならないとしている。

チーム100はもうこの時点で、週日は午後3〜6時、週末の土日は午前9時〜午後5時までを製作に充てていた。このスケジュールだと勉強とロボット開発以外には、遊びに行く時間もなさそうだ。

チーム100には、キャプテンが2人いる。1人はアドミニ関連、もう1人はテクノロジー開発を担当する。もちろん、いずれも高校生のメンバーである。

ハードウェア、ソフトウェア、アドミニに分かれて作業がピークに

ハードウェア、ソフトウェア、アドミニに分かれて作業がピークに

アドミニ関連では、スポンサーを募ったり、寄付金を集めたり、ウェブサイトを充実させたり、マーケティングを行ったりといった仕事がある。高校生のチームとは思えないような多岐にわたった作業をこなさなければならず、まるでスタートアップの予行演習をしているような仕事ぶりだ。

テクノロジー面では、開発や製作の進行をハードウェア、ソフトウェア両面で牽引する。開発の隅々に目を配り、チームをまとめていく手腕が試される。

よく、アメリカでは小学校低学年から、自分たちでレモネードを作ってそれを路上で売り、教材購入やイベント開催のための資金を集めるといったことが盛んに行われている。

ものづくりだけでなく、それを売れる商売にする実践力とその過程に伴う社会勉強、その中で養われるチームワーク。そうした多面的な要素を重視する教育環境の中では、ロボット・コンペの参加までの道のりは、理想的なプロジェクト・ベース学習と言えるだろう。

ただし、ほとんどの学校ではFRCへの参加はカリキュラムの一環ではなく、有志生徒たちによる課外活動だ。授業と宿題、クラブ活動に加えて、ロボット開発にも関わりたいという熱心な生徒たちがここに集まっているのだ。

興味深いのは、大人のメンターたちの存在である。チーム100では、かつて自身の子供がチームに所属していたという父兄が多く関わっているようだった。生物学の先生も、もう何年もチームのメンターになっていると語っていた。今は大学生になった元メンバーもいる。地元企業で電子技術開発やセンサー技術開発に携わっているという頼もしいメンターもいる。メンターらがそれぞれの強みを生かして生徒のサポートにあたっている様が、非常に印象的だった。

今年のFRCのタスクは「リサイクル・ラッシュ」と名付けられている。リサイクル場で作業をするロボットを想定したもので、四角い容器を2つ重ねた上に丸い大バケツを載せ、さらにバケツの中にゴミを入れるという一連の流れが求めらるタスク。バケツをうまく安定して載せられず、それが倒れてロボットを壊したりするリスクもある。油断ができない作業だ。

下のビデオで、タスクと競技基準が説明されている。

実は、FRCには戦略的頭脳を鍛える要素も含まれている。どんなロボットにするかはもちろんだが、それ以外の周辺要素で戦略が必要なのだ。

たとえば、どこの地域予選に参加するか。地域によっては強豪チームばかりが揃っている場所もある。全米でどの予選地域に登録しても構わないので、もし決勝戦にできるだけ進みたい場合は、そうした強豪チームのいない地域を選ぶのも手だろう。

西海岸では、やはりシリコンバレーの中心地が強豪チーム集積地として知られる。チームの父兄にはテクノロジー企業の社員が揃い、メンターにはNASAの従業員もいるだろう。負けず嫌いの彼らは、生徒に葉っぱをかけるだけでなく、もう自分たちの手まで出すようなかたちでロボット製作に参加しているかもしれない。

その点、チーム100は「生徒たちが自分の手でベスト・ロボットを作って欲しい」とメンターらは言う。「FRCへの参加は、生徒にとって成長のジャーニー(旅路)」と説明するメンターもいた。

また、アライアンスの相手選びも戦略のひとつだ。競技はチームごとではなく、複数のチームが組むアライアンスで争われる。アライアンスのチーム組みは、予選や決勝の現場で行われるのだが、どんなチームと組めば有利になるかを生徒たちは厳しく精査して、相手とのネゴに臨む。大人も顔負けの状況がそこには繰り広げられるのだろう。

そして、実際の競技でロボットをどう動かすかも戦略だ。競合相手が得点を得るのをうまく妨害し、自分たちは最も高得点を得られるように段取りを組む。そうした知恵を練るわけだ。

ところで、FRC参加は決して安くない。参加登録費は4000ドル。これで基本の技術キットが送られてくる。追加でロボット製作にかかる費用は上限4000ドルと定められているもの

基本キットに入っている部品の一部

基本キットに入っている部品の一部

の、地域予選に出場するための旅費、宿泊費、食費がかかる。団体バスをチャーターしたりする費用も必要だ。

これが決勝戦に進むことになれば、遠征のための航空費、宿泊費、食費と費用はさらにかさむ。チーム100によれば、だいたい2万5000〜3万ドルが毎年必要という。

したがって、ソフトウェア会社からアプリケーションを寄付してもらったり、ハードウェア会社から部品を提供してもらったり(ただし、ハードウェア部品は、寄付でもその価値が製作費4000ドルの中に含まれる)、また地域の企業から現金での寄付を募ったりすることで、参加を確保する。今年は全米で約3000チームが参加することになっているが、こうしたことに理解を示す社会環境もFRC と共に形成されていると言えるだろう。

今年のFRCには、3000チームの合計7万5000人の高校生が参加し、大人のメンターは1万8000人、試合をサポートするなどで関わるボランティアが1万6000人以上いるという。スポンサーになっている企業は3000社以上。

完成したチーム100のロボット。チームカラーであるオレンジ色のヘビがあしらわれている

完成したチーム100のロボット。チームカラーであるオレンジ色のヘビがあしらわれ、出場を待っている。(http://www.team100.org/より)

決勝戦は、4月22〜25日にセントルイスで開かれる。

FRCは「ハーデスト・ファン(Hardest fun)」と表現される。「ものすごく大変だけれども、楽しい」という意味。全米の高校生たちが、こんな楽しみを今見つけているのだ。